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昨年の台風19号は日本全国に甚大な被害をもたらし、東京においても、荒川・江戸川・多摩川・隅田川など、主要河川の一部が氾濫または危険水域に達するなど、多くの都民が不安と危険を感じる事態となりました。

私もあの時、台風に伴う大雨の襲来とともに、河川水位を監視するライブカメラに釘付けになり、緊急時の対応を頭の中でシミュレーションしていたことを鮮明に覚えています。

東京は一部地域を除いて溢水を免れましたが、台風が過ぎ去った翌日昼頃、私は地元の被害の確認と、荒川・江北橋たもとの宮城ゆうゆう公園から荒川の状況を視察。雨が止み一夜開けても、水位が非常に高く、濁流ともいうべき激しい流れと膨大な流量に、大河川の水の勢いがいかに恐ろしいかを痛感しました。

この経験から、国土強靭化の一つである全国の治水安全対策、ことに地元荒川の治水対策について、どうしたら都民・国民に責任が果たせるのか、国土交通省水管理国土保全局河川計画課とも意見交換しながら、一年間いろいろなデータを集め、まずは現状の把握に努めました。

■河川治水安全対策の国際標準

まず、大河川の治水安全対策について、国際標準はどうなっているのか。(資料1)にある通り、わが国の河川の中で最も安全度の目標値が高いのが荒川(その他利根川・多摩川・大和川など全国8河川)で、200年に一度の大災害に耐えられるよう計画されています(1/200はそういう意味です)。

(資料1)

しかし、(資料2)をご覧いただくと、米国ミシシッピ川は500年に一度、英国テムズ川は1000年に一度の大災害に耐えられるよう設計されています。それぞれお国の事情が違うので単純に比較はできませんが、気象条件が年々苛烈になるわが国において、200年に一度の対策が適切なのかどうかは、議論の余地がありそうです。

(資料2)

■国土強靭化と治水安全対策の必要性

それでは、各国ともなぜこのように治水安全対策に力を入れているのか。

それは、特に人口の集中する都市部での水害は、国民の生命財産に甚大な被害・影響が発生し、単に経済的損失だけを見ても(それは貨幣に換算できるものだけですが)、大変な被害・影響が及ぶからです。

それを記載したのが(資料3)です。今の状況で(たとえば今日)荒川が氾濫した場合、破堤点によっても被害は異なりますが、浸水域内人口はおよそ156万人、被害額が24.7兆円(貨幣換算できるもののみ)と試算されています。そのほか孤立する人の数が約66.4万人、電力停止により影響を受ける人が約110.6万人と推計されています。

(資料3)

これに対して、荒川第二・第三調節池が整備されると、破堤点は3か所から1か所に減り、浸水域内人口は99万人減って57万人に、被害額は14.9兆円減って9.8兆円に、孤立する人は40万人減って26.5万人に、電力停止により影響を受ける人は56万人減って44.2万人になります。

つまり単純に、荒川第二・第三調節池の整備費用と被害額の対比だけ見ても、整備費用が1275.4億円に対して、被害額の減少は14.9兆円ということになりますので、いかに事前防災が重要であるか、そしていかに現在政府と私たち与党が取り組んでいる国土強靭化が必要であるか、容易にご理解いただけると思います。

かつての民主党政権は、スーパー堤防事業を「スーパー無駄遣い」などと揶揄し、八ッ場ダム建設を「コンクリートから人へ」という俗耳に入りやすいキャッチフレーズで潰そうとしていました。

国民の生命・財産を守るという国家として最大の使命は、対外的には外交や安全保障政策となりますが、内政においては災害対策としての国土強靭化が、国民にとって安全安心を担保する、最も基本的な政策であることは論を待ちません。こうした地味であっても一歩ずつ進めていかなければならないハード整備(公共事業)にも、私は大きな意義があると確信します。

■荒川第二・第三調節池について

(資料2)でお示しした通り、荒川の治水安全度の目標は1/200で、その目標に対する整備率は、2019年度現在70.6%です。中でも重要な未整備施設が、(資料4)の荒川第二・第三調節池です。現在整備が完了しているのは、調節池としては第一調節池(通称・彩湖、平成16年完成)のみで、その上流部に計画されています。

(資料4)

新たな2つの調節池が完成すると、第一調節地の他に更に合計5100万立米の治水容量を確保することができるようになります。これによって東京の治水安全度はさらに向上しますので、令和12年度完成を目指して既に始まっている事業ですが、一日も早く完成・供用できるよう努力していきたいと考えます。

■更なる治水安全度の向上に向けて

国土強靭化には、様々な取り組みが必要です。新たな投資(公共事業)だけでなく、今まで整備したインフラの有効活用、いわゆるインフラストック効果を発揮させる視点も重要です。

菅総理が官房長官時代から手掛けてきた、利水ダムの一部治水利用は、すでに具体時取り組みが始まっていますが、大変有効な手法です。これは一見地味な政策に見えますが、今までのダム事業からすると、コペルニクス的転換かもしれません。

ところで、来年度(令和3年度)予算の政策的主要テーマは3つです。

  1. 新型コロナウイルス対策
  2. デジタル庁の設置
  3. 国土強靭化

私は国民の生命・財産を守ることを第一に、山積する内外の課題に対し政権与党の一員として、これからも全力で働いてまいります。

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